三日目を終え、ようやく「言葉」を取り戻しつつあります。
お会いした紳士様は、とても思慮深い方でした。
常に頭を回転させ、言葉を組み立て、論理の海を泳ぎ続けている……そんな彼が口にしたのは、意外にも「無になるためのスイッチ」という言葉でした。
「考えすぎてしまう自分を、強制的に休ませる場所が必要なんだ」
その言葉は、仕事柄「言葉の薄皮」を纏って生きている私の胸に、静かに、けれど深く突き刺さりました。
思考の檻から逃げ出し、ただの「本能」としてそこに在ること。それがどれほどの贅沢か。
初めて縛られる感覚。自由が失われるほどに、皮肉にも私の脳内を支配していた喧騒は消えていきました。
身に纏っていた虚飾が物理的に剥ぎ取られた時。
そこにあるのは、言葉による正解も、淀みのない最適解も必要のない、ただ熱と呼吸だけが支配する空間。
自力では決して辿り着けない安息でした。
私の思考を奪い、本能の波に沈めてくださる悦びを胸に秘めて。
次に思考を放棄する時まで、今日も日常の海を泳いでいこうと思います。
葉末 透子
透子日記 『無』

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